今のインテリアのトレンドについて
――お二人は先日のミラノサローネでもご一緒にお話しされているのですよね。近年のインテリアのトレンドについて教えていただけますか。
窪川:今はリバイバル系とか、昔の焼き直しが多いように感じますね。カッパー(銅)やブラス(真鍮)の色、質感とか……。それらを使った小物もよく出ていますし。
安積:5年前のトム・ディクソンのライトシェードあたりからの流れですね。マルセル・ワンダースとか、フィリップ・スタルクもその辺が好きですね。ロシアのお金持ちが台頭するのと同時に、やはりデザイン界も彼らのどこかクラシカルなニーズを汲むようになって。
――ノスタルジーということでしょうか。今回のデュオの新色も、そのような潮流からの発想だったのですか?
窪川:最近のトレンドを見ていると、真鍮の色にも合うようなペールピンクとか、暖色系のフェードしたようなものが多くて。でも、新色プロデュースの話をいただいた時に、ウォーターサーバーということで、「水」から離れたところには発想しなかったんです。それと、安積さんのデザインが馴染むものだったのでそこから離れたくないという考えもあった。時おりアクセントにもなる役割を負える色、しかも馴染むインテリアコーディネートを考えた結果、僕が提案したのは水分を含んだコンクリート色としてのペールブルー。隣にグレーがあるとブルーに見えて、ブルーがあればグレーに見えるんです。モノトーン系の空間に置いても色を使った空間にあっても似合うかなと。
空間に合わせやすい色
――春夏のインテリアに爽やかさを添えるような、優しいブルーですよね。こちらに窪川さんがスタイリングされた写真があります。
窪川:リノベーションしたような物件で、躯体のコンクリ感がむき出しになったような空間ですね。グレースケールの中にほんのり色味があるような、夏らしいクールなイメージなんです。
安積:これきれいですよね。イタリアの家具メーカーにカルテル社というのがありますが、そのパトリシア・ウルキオラの椅子にこんな感じの色がありますね。
――ブルーグレーという感じの色ですよね。
窪川:そう、色を使った空間にも、色のない空間にも合わせやすい色なんですよ。グレーと同じくらい溶け込んでくれるから、決して押しの強い、難しい色ではないです。
――安積さんが、dewoのデザインに水滴のイメージを盛り込まれた、その雰囲気も大事にされていますね。
窪川:単体で見ると女性的にも男性的にもなる色です。置かれる状況によって可愛らしくもあり、クールでスタイリッシュでもあり。最近、キッズもののプロダクトにもこういう色がありますよね。クールで高貴な雰囲気でもあるけれど、キッズのプロダクトの親しみやすさもあるかなと。
――安積さんが唯一ご心配されていたのは、白とのコーディネートだったとか。
窪川:ええ、安積さんと先日のミラノ・サローネでお会いしたあと、ロンドンでも打ち合わせをして、安積さんのアドバイスで色調を少し淡くしたんです。コントラストが少しきつかったのを修正しました。
安積:デザイナーとしては、青と白とのコントラストがきついと安っぽくなるから、どうやって馴染ませるのかなと気にしていたんですが、いい形で対応していただいて。飲み口のところに配された白で、清涼感のようなものが確かに表現されているなと思いました。方向性として、窪川さんが青を選ばれるのはよくわかります。青は、水のシンボルのような色ですよね。これはウォーターサーバーですよと認識できる。冷たいお水を飲みたいという欲求をかき立ててくれる清涼感のある色で、これからの暑い季節にぴったりですね。
安積伸(あづみしん)
1965年兵庫県生まれ。ロンドンを拠点に、国際的に活躍するプロダクト・デザイナー。NECデザインセンター勤務を経て、92年に渡英。英国王立美術大学修士課程を修了後、95年にデザインユニット「AZUMI」として活動の後、05年に「a studio」を設立。ティファール社やマジス社、ラパルマ社など多くの国際的企業でプロダクトデザインに携わる。FX国際インテリアデザイン賞2000「プロダクトオブザイヤー」をはじめ、グッドデザイン賞、100%ブループリントデザイン賞など国内外で数多くの賞を受賞。また、審査員としてもIF賞(独)などに参加。「LEM」スツールがビクトリア&アルバート美術館(英)のパーマネントコレクションに選ばれるなど、各地の美術館に作品が収蔵されている。最近の仕事では、ブルーボトルコーヒーのテーブルウェアなどのデザインも手がけている。
窪川勝哉(くぼかわかつや)
インテリアのみならずクラフトから家電、クルマまでプロダクト全般に造詣が深いインテリアスタイリスト。『エルデコ』、『レオン』などの雑誌やTV、その他メディアでのスタイリングに加え、ウインドウディスプレイやイベントのデコレーションなども手掛ける。またメーカーとのコラボレーションによる家電プロデュースも行っている。