デザインについて
FRECIOUS(フレシャス)が、新コンセプトのウォーターサーバー「FRECIOUS dewo mini(フレシャス・デュオミニ」を発表しました。
デザインはもちろん、グッドデザイン賞を受賞した「FRECIOUS dewo(フレシャス・デュオ)」以来、フレシャスのウォーターサーバーを次々と手がけられてきた世界的なプロダクトデザイナー・安積伸さんによるもの。
デュオのデザインコンシャスな機能美を継承しつつも、今回新たに盛り込まれた新コンセプトは「もっと小さく、もっと自由に」。
キッチンだけでなく寝室など自由な置き場所で使えることを目指しました。
さて、フレシャスの技術開発力とデザインとの今回のコラボレーションは、わたしたちの暮らしのどんなシーンにどのように馴染み、彩ってくれるでしょうか。
デザイナー安積伸さんと、フレシャスの開発担当者にお話をうかがいました。
スペースが限られている方にも選択肢を——
「置き場所がない」との声に対応
——デュオミニ試作機を拝見して、そのコンパクトさに「あのウォーターサーバーをこんなに小さくできるものなのか!」と驚きました。しかも、単純に切って等倍縮小したようなものではない、細部まで手の込んだデザインですね。
開発担当:まず一つには、これまで設置スペースがないとの理由でウォーターサーバーを断念されていたお客様のために、選択肢を広げたいと思ったんです。
ひとり暮らしの方やシニアの方、ワンルームマンションのような限られたスペースに住んでいる方でも、ボタンを押すだけで美味しい水を飲める環境を提供しようと。
——いろいろな方に、簡単に美味しい水とお湯を召し上がって欲しいですよね。
開発担当:二つ目には、ウォーターサーバーを量販店で簡単に手に入る家電の一つにしたいという考えもありました。それには小型化が必須。これまでも、お客様の中には「ウォーターサーバーはサイズが大きくて断念した」との声がありました。コンパクト化を可能にしたのは、ひとえにフレシャスの特徴であるウォーターパック。
他社のガロンボトルには、コンパクト化するにはサイズ上の限界がありますが、当社のウォーターパックなら容量の自由がきく。今回、新たにデュオミニ専用の4.7Lウォーターパックを作りました。
——あのミニのサイズに4.7Lの水とは、通常の平均的なウォーターサーバーに約10〜12Lの水が充填されることを考えると、実質的には最大の容量。とても空間効率的とも言えますね。
開発担当:タンクの小型化とは難しいものなんです。お湯1杯しか取れないようなタンクでは、暮らしの中のウォーターサーバーとしての用を為しません。ですから私たちは構造を工夫し、一度の使用で80度以上のお湯150ccを4〜5杯、10度以下の水150ccを5〜6杯取れるように確保しました。本体内のスペースは、考えうる最大容量のタンクと基盤や配管が詰め込まれ、まるで押し寿司のような密度ですよ(笑)。
dewo路線の継承。
デザインのリクエストに、技術で応える
——フレシャスならではの技術面のこだわりもさることながら、コンパクト化を実現するには、デザイン面でもかなりの試行錯誤があったのではありませんか?
安積伸さん(以下、安積):ミニの根幹のコンセプトは「小型化」。そこでdewo路線を継承するのかしないのかが、はじめの問いでした。私がデザインを手がけた一つ目のデュオで水パック式ウォーターサーバーとしてのとても良い答えを出すことが出来、グッドデザイン賞もいただくなど業界からも大きな評価をいただき、フレシャスはプロダクトのデザインがCI(コーポレート・アイデンティティ)になりえると感じました。
メルセデスやBMWのように、商品を目にしただけで「あの会社だ」とわかる事が理想です。マスタープランとしてデュオの良さを引き継ぎ、デザインに統一感を持たせ、伸ばしていきたいと考えました。
ですからまずデザイン面では、デュオの小型化であることを強く意識して、日本家庭で使われるプロダクトであることを念頭に、とにかくサイズを詰めて全体のボリュームを減らしてもらいました。
開発担当:実装密度を上げて、あっちで1ミリ、こっちで1ミリと、とにかく足し算で1センチでも5ミリでも隙間を詰めて……。あの小ささは、安積さんのリクエストにエンジニアリングの精査努力でお応えした結果です。実際、1ミリ詰めただけでも「ボリューム感減ったな!」と、まったくイメージが変わるんですよ。
寝室でも使える静音設計
——今回のミニでは、寝室でも使えるような静音設計にも苦労されたとか。
開発担当:ウォーターサーバーのノイズの原因とは、水の冷却に使うコンプレッサーの動作音なんです。ですからコンプレッサーをやめて、ワインセラーや小型冷蔵庫に使われるペルチェ方式を採用しましたが、今度は発生する熱を放出するために放熱ルーバー(格子状の吹き出し口)を設ける必要が出てきます。
安積:そのルーバーのスリットを細くしたいというのが、デザイナーの私からの強い要望でした。
ミニはカウンター上に置いて使う事を想定していますから、背面のデザインにも手が抜けません。ルーバーの穴がまるでザルのように見え、中の機構が丸見えになるのがいただけないと感じました。ルーバーであることを意識させたくないんです。ところがルーバーを細くすると放熱効率が低く、冷却がだめになるとの回答を受けて、いろいろな細さを試した結果、最終的にスリットの奥行きを深くし、穴を見えにくくするという方法をとりました。
開発担当:本体の高さにも2〜3案あって、初めは480ミリだったものを、一度は495ミリに上げ、最終的に中の構造を見直して470ミリへ下げました。開発側としては、デザインの要望に必死に応じるのが仕事ですから(笑)。
- 安積伸(あづみしん)
- 国内外で数多くのデザイン賞を受賞し、世界の複数の美術館に作品が収蔵されるなど、国際的に活躍するデザイナー。京都市立芸術大学、RCA(英国王立美術大学)大学院を経て、25年間英国ロンドンを拠点に活躍。2015年、「FRECIOUS dewo(フレシャス・デュオ)」と、安積さんが2001年にデザインを手がけた名品「エッジ・クロック」がJIDAデザインミュージアムコレクションをダブル受賞したのみならず、今回「FRECIOUS Slat(フレシャス・スラット)」が2016年度グッドデザイン賞を受賞するという栄誉に輝く。2016年4月に法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授へ就任。