着る物や、食べる物は毎日考えるのに対し、「衣食住」の中で、一番意識が低くなりがちな「住」そこで、世界中のインテリアのトレンドにも詳しく、雑誌やTVでも活躍中の人気インテリアスタイリスト・窪川勝哉さんにインテリアの「置き換えイメージ術」を教えてもらいました。
季節の変わり目や、ライフステージの変化など、気持ちを新たにする時期には、部屋の模様替えや片付けを計画する人も多いのではないでしょうか。一方で部屋づくりへのモチベーションが高まる一方、「インテリアはハードルが高い」という人も少なくないのでは、と窪川さん。
「衣食住のうち、住ってほかのふたつに比べて難しく考えられがちな気がするんです。食べ物やファッションについては、好き嫌いや、アリ・ナシの判断ができても、ことインテリアに関してはアイテム選びやコーディネイトに悩む人が多い。経験が少ないせいもあるかと思います」
と、思わず納得のご指摘。とはいえ、インテリアは食や衣のように日々経験を重ねるのも難しい気がします。センスや判断力を鍛えるよい方法はあるのでしょうか。
「ひとつの解決策として、食や衣など誰でも身近に感じる事柄に置き換えると、イメージを共有しやすいことに気がついたんです。僕がいろいろな方とお話しするなかで、たとえ話を取り入れるとインテリアマニアでなくても興味を持っていただけることが多くて」
具体的にはどんな風にしたらよいのでしょうか。
「僕がよくお話しするのは、『部屋づくりの基本は白ごはんとおかずの関係に似ている』という持論。白ごはんはソファやベッドなどの大物家具、おかずはクッションやラグといったインテリア雑貨です。たいていの人は、毎日白ごはんを炊いて、そこに和風や洋風のおかずを合わせますよね。同じ感覚で、白ごはんである家具は、上質で飽きのこないベーシックな品を揃えておき、そこに季節やトレンドによっておかずをトッピングする。そうすると、幅広いテイストで、質の高いインテリアを長く楽しめます」
確かに、白ごはんとおかずに例えることで、より直感的に理解できる気がします。
「ここで大切なのは家具の選び方。家具は出費が大きく、買い替えが難しいものだけに、本当に質がよく、長く使える、飽きのこないものが理想。特にソファやベッドは直接肌に触れるものですから。実は家具って、ビジュアルやサイズ、価格などで判断した『こんなもんかな』という品をなんとなく使うこともできてしまう。でもこれは、イマイチな白ごはんを毎日ぼんやり食べているようなもの。少し残念ですよね。フレシャスを愛用している読者の方なら、フレシャスの水やお米にこだわり炊いたご飯で、毎日食べる白ごはんの質もぐっとあげられるはず。インテリアもその延長でとらえ、いいものを選ぶ心地よさやアレンジする楽しさを感じていただけたら嬉しいです」
今回窪川さんが紹介するのは、部屋づくりの基本となる5つの考え方。身近なものに置き換えて理解を深めることで、ワンランク上の部屋づくりに役立つはず。
ソファ&テーブルは同じなのに
この変化!
前ページで紹介した「白ごはん&おかずの法則」を、窪川さんに実践していただきました。同じソファとテーブルでも、合わせるクッションやラグによって印象は大きく変化します。 「上質でベーシックな家具を揃えておくことで、トレンドが変わっても、アレンジを加えて多彩なテイストを楽しめるんです」 ソファの色は写真のライトブラウンのほか、ベージュやオフホワイト、ライトグレーもおすすめ。テーブルは、ソファの脚と近い素材だとまとまり感がアップ。
ひと手間加えるだけでグッとあか抜けます
「『とにかくモノを減らそう』と、一切のデコレーションを排除する。そうすると、すっきり見えるかもしれませんが、ファッションに例えると、単にトップスとボトムだけ着ているようなもの。味気ないし、おしゃれに見せるのは至難の技です」
そこでプラスしたいのが、ファッション小物 のようなアイテム。例えばダイニングにはテーブルランナーを敷き、季節の花を飾ってみる。装いにストールを巻いたり、ハットをかぶったりするイメージで、少しだけデコレーションを足すと、ぐっと上級者っぽく、しゃれた印象になるとか。
「ホテルの部屋がおしゃれなのは、生活感のあるものを見せず、+αの装飾を加えているから。ベッドにフットスローやデコラティブピローを置いていることが多いですよね。このさじ加減がうまいと、とてもセンスよく見えるんです」難しく考えず、日々の装いにファッション小物を合わせる感覚であれこれ試してみる。その繰り返しで、インテリアセンスは確実に磨かれるはず。
情報を減らすことがすっきり見せるコツ
「収納は多くの場合、色や形、大きさがバラバラのものを一箇所にしまいます。それをオープンシェルフに雑然と並べているだけでは、たとえそれなりにおさまっていても、目から入ってくる情報が多くあまりすっきり見えないんです。『収納があまり得意でない』という苦手意識があるなら、いかにものからの情報を減らして収納するか、という点に注力すべき」
理想にしたいのは、クローゼットや押し入れといった扉つきの収納。意外なところでは冷蔵庫も同様です。いずれも扉を開けた状態と閉めた状態では、すっきり具合の差は歴然。収納の極意はものからの情報をシャットアウトすることだと改めて納得します。
「とはいえすぐに扉つきの棚に買い替えるのも難しいもの。そんな時は整理ボックスを活用すれば、オープンシェルフでも近い状態をつくれます。ボックスは極力シンプルに、似た色やテイストで揃えるとベター。そうやって生活感の出るものの情報量を減らした上で、お気に入りのオブジェなどをシェルフ上に飾ってあげるとそのアイテムが引き立ちます」
高さや色を揃えて美しい“景観”を作る
キッチン家電をレイアウトする際は、極力ゆとりを持たせるのがおしゃれに見せるコツ。クリアボトルなどを使う際は形を揃え、まとまり感を演出する工夫を。
「キッチン周りは、コンパクトな空間に、炊飯器やトースター、ミキサーといった多様な家電や調理器具が並ぶ場所。ここをまとまりよく見せるには"街並み"づくりをイメージするとよいのではないでしょうか。景観の美しい街は、多くが建物の高さや色に制限を設け、調和を保っています。その要領で、
家電をひとつひとつの建物と見立て、デザインの好みだけでなく、『目立ちすぎず、周囲に溶け込むか』という視点も持って色やサイズ、テイストを決めると、統一感のある空間がつくれます」
その際、キッチンで大きなスペースを占める冷蔵庫やフレシャスを基準にすると無理なくまとまるとか。
「白ならクリーン、黒ならスタイリッシュなイメージ。キッチン家電を置く棚も、主張しすぎない、テイストの近いものを合わせると雰囲気よく決まります」
みなさんの家に置くウォーターサーバー。まずは模様替えの際にも周りの家具や小物と合わせてみませんか?
“雰囲気のよい光”を
もっと気軽に取り入れて
"部屋は間接照明を取り入れるとおしゃれな雰囲気になる。" 知識としてはなんとなく知っているけれど、いざ実践となるとハードルが高い…。 「そんな時にはスマホ撮影の光に置き換えてみるといかがでしょう。一箇所から部屋全体を照らす照明は、スマホのフラッシュを直接当てているようなもの。 そう考えると、いかに平坦でのっぺりした印象になってしまうか実感できるのでは? 一方、対象に直接光を当てない間接照明だと、空間や壁に陰影が出て、表情が生まれます。写真のように、部屋のコーナーやベッドサイドに間接照明を取り入れると、雰囲気が一変しますよ」
雑誌やテレビをはじめ、インテリア関連セミナー、大学での講義など多彩なフィールドで活躍するインテリアスタイリスト。雑貨や家電に関する、広く深い知識を持つ。
http://interiorstylist.jp
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厳選した素材を使い国内外で制作されるオリジナル家具をはじめ、シンプルで飽きがこず、長く愛用できるアイテムが揃う。
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