世界有数の水道先進国と言われる日本。
では海外の水事情は日本とどう違うのでしょうか。
そこで今回は、各国の水道と
ウォーターサーバーのあれこれを調査してみました。
アメリカ合衆国
United States of America
今回のレポートは、ウォーターサーバー発祥の地・アメリカです。歴史は非常に古く、南西部の乾燥した地域に水を供給するため、ろ過装置がついたウォーターサーバーが生まれたのが1910年頃のこと。1930年代には水の宅配ビジネスが確立されていたというから驚きです。水道が整備された現在のアメリカでは、安全飲料水法などにより厳しい基準が定められ、水道水は安全に飲めるとされています。ただし、化学物質による汚染やインフラの老朽化が報道され、アメリカのすべての州が水質問題に直面しているともいわれています。こうした事情から、水道水をそのまま飲むのは全体の世帯の30%弱にとどまり、70%以上はウォーターサーバーや浄水器、ペットボトルの水を飲用しています。
日本の25倍もの面積があるアメリカでは、同じ国内でもその広さから天候や地形が大きく異なるもの。地域によっての硬度の差は、他の国と比べても大きくなります。主要都市の水道水でいうとニューヨーク30mg/L、サンフランシスコ55mg/Lなど、日本と変わらない軟水のところもあれば、内陸部のグランドキャニオンでは300mg/Lを超え、ラスベガスでは400mg/Lとさらに高くなることも。硬度100mg/L以下の軟水がほとんどの日本と比べるとその差は歴然。傾向としては、沿岸部は軟水、内陸部は硬水、と大まかに分類することもできますが、比較的海に近い都市でも100mg/Lを超える硬度になることもあります。アメリカへ旅行に行くときは、まずはその土地の水質をチェックしていくか、ペットボトルの水の硬度を確認してから購入するのがおすすめです。
そんなアメリカの現在のウォーターサーバー事情は? 調査によると、アメリカのウォーターサーバー台数は2015年で700万台程度※1(日本は2018年までで395万台※2)で、今後もさらなる増加が予測されています。レンタルのイメージが強い日本と違い、家庭用のウォーターサーバーは購入するのが一般的です。家電チェーン店などの小売店で販売されていて、簡易的で安価なタイプから、高機能のデザインモデルまで様々な種類が店頭に並びます。デザインのトレンドとしては、安価なタイプにはプラスチックやセラミック素材が多く採用されており、機能性の高い機種ではメタリックなステンレス製のものが好まれているそう。また、日本でいう回収型のガロンボトル用の機種のほうがアメリカでは普及しているというのも大きなポイント。日本の住環境に合わせて作られたdewoやSlatの軽量・使い捨て容器は、日本独自の進化と言えそうです。
※1 ゼニスインターナショナル調べ
※2 一般社団法人 日本宅配水&サーバー協会の調査による。
アメリカでは、食料品の買い物は週に一回まとめてするのが一般的。週末のスーパーマーケットでのおなじみの風景。
ユニークなのは、日本同様の宅配システムがある一方、メーカーによってはスーパーマーケットで大きなボトルの販売も行われていること。多くはリターナブル(回収型)で、空のボトルをスーパーにある回収マシンに入れると、次回の購入に使える割引チケットがもらえるものも。ボトルは5ガロン(約19リットル)が中心でかなり重く運ぶのにも苦労しそうですが、持ち帰るのも、空容器の回収も消費者が行い、その分割引があるという合理的なシステムです。巨大なスーパーマーケットに車で出かけ、たくさんの食料品と一緒にボトルを買い込むなんて、いかにもアメリカ的です。
回収マシン。空ボトルは
中央上部の穴に入れる仕組み。
店舗の一角で5ガロン
(約19ℓ)のボトルを販売中。
水道先進国と言われる日本も、ペットボトルをはじめ、「水を買う」という習慣が数十年前より進んでいると思いませんか?その変化はウォーターサーバーだけで言っても、dewoやSlatのような軽量・使い捨ての容器が支持されていたり、dewo miniのような卓上の小型タイプが登場したり、自宅まで水が定期配送で届くようになったりと様々。これらが日本では当たり前となったように、利便性重視の日本式ウォーターサーバーがアメリカでも普及する、なんていうこともありえそうです。
そんなスケールの大きいイメージのあるアメリカですが、IT先進国という一面もありますよね。最新のITトレンドはアメリカから生まれるとも言われていますが、その波はウォーターサーバーにも押し寄せている様子。現在アメリカでは、「スマートウォーターサーバー」が注目されています。タッチパネル式の画面操作で水がサーブでき、なかにはフレーバーウォーターが飲めるものなど、新しい機能を持たせたモデルも。さらに、GE、Pioneer、LG、3Mなどの家電メーカーの参入もあいまってその市場規模はどんどん拡大中です。
日本と同様に、アメリカでも今や生活の一部となっているウォーターサーバー。これからも国民性やニーズに合わせた独自の進化を続けていくのが今から楽しみです。
※3ユーロモニター調べ