現代人の多くが、睡眠にまつわる悩みを抱えています。
そこで、人気女医・日比野佐和子先生に"上手に眠る技術"を教えていただきました。
眠りへの意識を高め、質の良い睡眠で心身を充実させましょう。
「ベッドに入ってもなかなか寝付けない」「数時間おきに起きてしまう」など、睡眠不足に悩む人が増えています。しかし、医師・日比野佐和子先生は、「日中のコンディションが悪くなければ、深刻に心配することはありません」と言います。「理想の睡眠時間は7時間だとされていますが、年齢によって異なりますし、眠りすぎも脳に悪影響を及ぼすことがわかっています。眠りの質を上げれば、睡眠不足を補うことができますし、眠りに対する満足感が得られます」人間の脳は、眠っている間に様々な作業をしています。睡眠不足によって脳の働きが低下すると、集中力や判断力が鈍り、イライラしたり、落ち込んだり……と精神面でも悪影響を受けることに。最近では、睡眠不足が認知症リスクを高めるという研究結果も発表されました。逆に、眠りの質が上がれば、自律神経とホルモンのバランスが整えられ、心身のコンディションが良くなることも証明されてきています。
「人は深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を90~120分間隔で繰り返しています。入眠時の90分間は、とくに多くの成長ホルモンが分泌されています。骨や筋肉、皮膚の新陳代謝がもっとも活発になるタイミングですから、美容やアンチエイジングのためにも、最初の90分から3時間をぐっと深く眠ることが重要ですね」では、眠りの質を上げるには、どうすればいいのでしょうか。「大事なのは、日中の過ごし方です。眠る前の数時間をいかにリラックスできるかで、眠りの質が変わります。また、就寝前に体を温めると眠りに就きやすくなります。生活習慣を見直すことで、心身ともに充実した朝を迎えられるでしょう」
◀︎就寝には周期があり、深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠を繰り返している。明け方になるにつれ、レム睡眠の時間が長く、眠りが浅くなってくる。
日比野 佐和子
医学博士、アンチエイジング専門医。医療法人康梓会Y’sサイエンスクリニック統括院長、大阪大学臨床遺伝子治療学講座 特任准教授。アンチエイジング医学の第一線で世界的に活躍し、テレビや雑誌等でも引っ張りだこの人気ドクター。『最新医学で証明された最高の食事術』など著書多数。
睡眠中はたくさんの成長ホルモンが生み出され、代謝を正常化させています。成長ホルモンには筋肉や骨を強化する働きもあります。また、睡眠中に代謝が活発に行われることでコラーゲンやエラスチンが増加し、肌の弾力が保たれています。
脳内の細胞には大きく分けて神経細胞とそれ以外の細胞(グリア細胞)の2種類があります。グリア細胞は睡眠中に縮むことがわかってきました。睡眠中に神経細胞の周囲の空間が拡がる結果、老廃物を含んだリンパ液が昼間よりも効率よく流れ、脳外へと運び出されています。
体内の働きを正常に保つ神経を「自律神経」と呼びます。自律神経は、大きく「交感神経」と「副交感神経」の2つに分かれ、前者は緊張しているときに働き、後者はリラックスしているときに働きます。睡眠時には副交感神経が優位に働き、脳と肉体を休ませています。
日中の記憶のうち重要事項は定着させ、不要な事項は消去するなど、脳は睡眠中に情報を整理しています。脳がリセットされることで、目覚めたあとはすっきりするのです。
成長ホルモンは、免疫力をアップさせる効果があります。適切な睡眠が、様々な病気予防になっています。入眠直後の3時間のうち、深く眠っているときに、人間はもっとも成長ホルモンを分泌させています。眠るだけで免疫力がアップするのです。
日々のちょっとした習慣で、眠りの質は変わります。眠れないのは、自律神経のバランスが逆転しているから。人は、眠りの数時間前から副交感神経が優位になっているのが正常です。食べ過ぎ、寝酒、激しい運動、スマホいじりなど、夕食以降に交感神経を刺激する習慣がある人は、控えましょう。また、翌日の仕事のことを考えたり、今日の失敗を思い出して悔やむのはストップ!眠れば自然に脳が情報を整頓してくれます。朝目覚めたら、カーテンを開けましょう。朝の光を浴びると体内時計がリセットされ、夜の寝つきがよくなります。
白湯の効果は絶大です。睡眠中に失った水分を補給するだけでなく、腸を活性化し、毒素を排出してくれます。血液の循環が良くなることで、血液がキレイになり、体温も上がります。すると、眠る前に体温を下げようとする働きが正常になり、入眠がラクになります。眠る前に飲む白湯もおすすめ。冬の隠れ脱水対策にもなります。
睡眠と食習慣は切り離せません。活動を始めるサインとなる朝食では、良質なタンパク質の摂取を。日比野先生は、毎朝卵を2個食べ続けているそうです。忙しい朝でも、ヨーグルト、豆乳などタンパク質を摂りましょう。
コーヒーや紅茶などは、3時のおやつタイムまで。それ以降にカフェインを摂ると、夜の眠りに悪影響を及ぼします。カフェインの覚醒効果は6~8時間も持続すると言われています。午後のドリンクはカフェインレスにしましょう。
のんびりリラックスできる場所で過ごしましょう。できれば蛍光灯よりも白熱灯の光のほうがベターです。音楽を聴く、アロマの香りを楽しむ、読書をする……など、好きなことをして過ごすのがいちばんです。
快眠への近道は、"寝室を眠るだけの場所にする"こと。寝室やベッドまわりがごちゃごちゃしていたり、汚れていたりすると、落ち着かないものです。自分が気持ちよくベッドに入れるよう、整理整頓しておくことも大切です。
入浴して体温が上がった後は、1時間ほどで深部(脳や内臓)の体温が下がります。入眠時には、深部の体温が下がることがわかっていますから、このサイクルを利用し、就寝約1時間前に入浴するのが理想的です。
人間が睡眠と覚醒を自然に行えるのは、メラトニンというホルモンのおかげ。ブルーライトを夜浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、網膜へのダメージも。スマホは寝室ではおやすみモードにし、メールチェックも翌日まで我慢しましょう。
「腸は第二の脳」と言われています。脳がストレスを感じるとお腹が痛くなるのは、自律神経から腸に刺激が伝わるため。腸を温めれば、ストレスは緩和し、安眠効果が得られます。はらまきは、冬場はとくにおすすめです。
生姜汁をフレシャスのお湯で溶けばできあがり。体がぽかぽか温まります。お好みで、はちみつやお砂糖で甘みをつけたり、レモンを絞ったりしてもおいしくいただけます。
強い抗酸化作用があり、アレルギー疾患や肌荒れの改善に効果的なルイボスティー。フラボノイドが多く含まれており、ストレスを抑制する効果が望めます。
水出しした緑茶の中には、カフェインはほとんど含まれていません。また、テアニンという旨味成分が発生するためにまろやかでおいしく感じます。
香ばしいそばの風味を満喫できるそば茶。ポリフェノールの一種・ルチンが豊富で、動脈硬化や高血圧、糖尿病の予防にもよいとされています。
神経を鎮めてリラックス効果を与える薬草として有名なカモミール。眠る前に飲むことで安眠効果が期待できます。風邪の初期症状や月経痛を緩和する作用もあります。
約50℃の白湯には、副交感神経を優位にする効果があります。冬の隠れ脱水症を防ぐためにも、乾燥対策としても、フレシャスのお湯を活用して一日数杯飲むのがおすすめです。
はちみつにはトリプトファンが豊富に含まれており、セロトニンが分泌されやすくなります。作り方は、はちみつ適量をフレシャスのお湯で溶かし、レモン果汁を入れるだけ。
興奮やストレスを鎮めるカルシウム、自律神経のバランスを整えるビタミンB12、睡眠ホルモンの分泌を促すトリプトファンが含まれ、質の高い睡眠を促します。
カフェインは摂取後30分ほどで効果が表れ始め、6~8時間ほど続きます。午前中や昼休みにシャキッとするために飲むのが望ましく、15時以降は避けるべき。下記はカフェインが含まれているドリンクです。知らずに摂取しないよう、今一度確認してみてください。