世界有数の水道先進国と言われる日本。では海外の水事情は日本とどう違うのでしょうか。
そこで今回は、各国の水道とウォーターサーバーのあれこれを調査してみました。
今回のレポートは、ITの進化とともにめざましい経済発展が続くインド。ヒマラヤ山脈に豊富な水源を持ち、多くの河川と地下水を涵養できる沖積平野が多くあり、水資源に大変恵まれています。ただし、全世帯の約3/4は居住敷地内に飲用水がないという調査結果もあり、対策が求められているのが現状です。水道の普及率は都市部でも70%、農村部ではさらに低く16%ほどにとどまっています。水道インフラの整備が整っていないことでせっかくの水資源を有効活用できておらず、結果、慢性的な水不足問題に悩まされています。また、実はインドの大部分では水道料金が基本的に無料で、“水にお金を払う”感覚が根づいていないそう。その水道も24時間給水でない場合が多いため、多くの家庭ではタンクを設けて、水を溜めて利用しています。
左:ウォーターATM。こちらは駅に設置。
右:最初に登場したタイプがこちらの円筒形のコンクリート構造のもの。
そんな水不足に悩まされていたインドの状況を変えつつあるのが、“水のATM”こと「ウォーターATM」の存在です。太陽光発電を動力とし、地下水を各地域の浄水プラントで処理して供給するウォーターATMは、インドの首都ニューデリーで2013年に登場しました。利用者はチャージ式のICカードを使って、24時間いつでもきれいな水を受け取れることができます。1セントにつき最大4リットルまで給水することができるので、インドの物価を考えても非常に購入しやすい価格設定です。このウォーターATMは、プロジェクト開始当初の反響こそ小さかったものの、現在では企業の社会貢献活動との結びつきなどもあり、徐々に認知されていきました。ニューデリー以外でもさまざまなタイプのウォーターATMが街中や駅に設置され、今では多くの家庭がこのサービスを利用しているそうです。このプロジェクトを統括する社会的企業のサルバジャルのアミット・ミシュラ氏によれば、上下水道インフラが充実しているとはいえないインドにおいてウォーターATMは、水を介した感染症が減少する効果もあったといいます。衛生的で安全な水にお金を払うことで結果的に医療費を節約できるという発想を十分に浸透させるために、「水は無料が当たり前」と考える人々の意識を変えていくことが、目下の最大の課題なのだとか。この水のATM が周囲で暮らす人にとって頼れる存在となっていくことで、当面の水不足問題の救世主となりそうです。
また、健康意識の高まりを受け、インドでもウォーターサーバーを利用する世帯が増加中。その市場は年平均6%以上で成長していて、2023年までに市場規模は6300万ドルを超えると予測されています。※1インドでは、ウォーターサーバーは家電ショップで購入するのが一般的。比較的生活水準の高い世帯がある地域のショップで販売されていて、取扱いのメーカー自体は多くはありません。しかし卓上タイプと床置きタイプ、スタイリッシュなカラーの製品も割と豊富に揃っています。現在のところは出水コックが付いているだけの常温の簡易タイプを中心に広がっていますが、今後は一般家庭にも冷水・温水などの機能が充実したモデルが普及していくのかもしれません。
※1 ゼニスインターナショナル調べ
キラナは日用品や雑貨を扱う個人経営の小さなショップで
インドではとてもポピュラー。
売られているボトルはノーブランドの品も多い。
水ボトルは『キラナ』で購入されることが多いそう。キラナは、インドの街中のいたるところに存在する個人経営の小規模小売店。おもに食品や日用品を扱っていて、国民に広く受け入れられています。このキラナのような小売店が空ボトルを回収する役目も果たしているのもインド独特のスタイルで、電話注文で新しいボトルのデリバリーを依頼することも可能です。
キラナの店先に並んでいるのは20~25リットルの大型リターナブルボトル(回収タイプ)。フレシャスの軽量容器と比べるとかなり重く感じてしまいますが、かつては生活用水の確保のために1日の4分の1を水汲みに費やすともいわれていたインドでは、重い水が宅配されるということだけでもかなりの利便性向上と言えますよね。これからウォーターサーバーの設置が増えるにつれて、フレシャスのdewoやSlatのように容器の軽量化が進んでいく可能性は十分にあるでしょう。日本とは大きく異なるインドの水&ウォーターサーバー事情ですが、安全できれいな水が暮らしに欠かせないのは同じ。今後も急速に変化を遂げつつ、インドの国民性にマッチした独自の発展が見られるのではないでしょうか。